今回、山下達郎がキャリアを超えた3枚組のベストを出すのは、そろそろ音楽ソフトの「パッケージ」の形体が変わることを予測した上での事だという。つまり、レコードやCDのような音盤という意識が希薄になっていくという事。だからCDというパッケージで現在のベストをリマスターして残しておくという事だ。寂しいけれど昨今のネット配信の流れやメディアの縮小化を見ればうなづける。
ビートルズは曲の再現性が難しくなり、大きなスタジアムで当時のしょぼいアンプを鳴らしても後方に音が届くわけもなく、聴衆がどんな曲をやってもただキャーキャー叫んでいるだけのライブに意味を見いだせなくなり、スタジオワークに専念していったけど、それは圧倒的なレコードの市場があったからシフトできたことだろう。音響施設が格段に向上し、CDが売れない現状では全く違う選択をするのかもしれない。
山下達郎のデビューはSUGAR BABEというバンドで、当時のエレックレコードの大瀧詠一のプライベートレーベル「NIAGARA RECORD」から1975年に発売された。
このSUGAR BABEのむき出しな感じのサウンドは、今でも少しも古く感じないし、現在の達郎サウンドにも確実に受け継がれている。
シアターライブの上映に始まり、SLS山中湖フェス~NHK-FMサウンドクリエーターズファイルのパーソナリティ・・・この流れでベスト盤の発売。素晴らしいプロモーション戦略だ。でもあのサウンドのクオリティあってこそだろう。すっかりここのところ1999年以来の達郎マイブーム。仕事仲間にもにわか達郎ファン急増中。
SONGS / SUGAR BABEを聴きながら、ゆるくて切ない風を感じてみるのも時には悪くない。少し突っ張っていて、何かをしなくちゃと焦りながら、叫んで、どこへ向かうともなく走っていたあの頃の自分に会える気がするから。
行くあてもない街で
空はどこも同じ 泣き顔を見せてる
あたたかい安らぎは 今はまだ遠い
雨は手のひらにいっぱいさ
そうさぼくの心の中までも
(山下達郎:雨は手のひらにいっぱい)
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