2013年5月14日火曜日
君を好きだった頃の事 その6
「いせや」の近くの「M」という喫茶店でジャズを聴きながら、ビッグコミックスピリッツの「ぼっけもん」を読みながら、ヤスを待っていた。約束時間を少しまわり彼はヘルメットを小脇に抱え店に現れた。KAWASAKIをいつも大事に磨いていた。俺はノートを返しながら、感想を伝えた。二人分のアイスコーヒーが運ばれてきた。彼はミルクだけをいれ、俺はガムシロップとミルクをいれた。
「早速読んでくれてありがとう。」
「なかなか面白かったよ」
「でさ、この配役の事なんだけど」
「うん」
「このギター弾きの役さ」
「え?」
「やってほしいんだ、お前に」
「無理無理、芝居なんか絶対無理」
「セリフは少なくするからさ」
「セリフが多いとか少ない以前に、本人の指向的に無理があるし、大体、俺はギター弾くくらいしか出来ない」
「そう、ギターを弾いてくれればいい。ギターを弾けるやつがいない」
「この年下の女性はケイがやる。」
「あ、ポニーテール。」
「あいつは、おまえが出るなら出てもいいと言っている」
「でも主人公もヒロインも知らないけど、どんな人達?」
「同級生ばかりで揃えた。ヒロインは一番綺麗だと噂の祐子」
「そう、それってお前の好みで決めてるだけじゃ・・・」
「監督の特権だからな」
「監督って・・・やっぱりなんか昔の映画研究会のノリなんだよな〜」
「もちろん、マナとカヨも出演する」
「あいつらは、明るくていいなあ、見てるだけで気持ちが楽しくなる。」
「ところで、俺の部屋にギターが一本あるんだけど、音が出ないんだ、直してくれたらお前にやるよ」
「どんなギターか知らないけど、そんなに簡単に直せないぞ」
「じゃ、ちょっと見に来いよ」
配役の話は何となく曖昧なまま、彼のアパートに向かう。彼のバイクの後ろにまたがると、夕暮れの風が気持ちよかった。
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